「大学に行きたい」という子どもの言葉は嬉しい。でも現実として、大学進学には大きなお金が動きます。奨学金・教育ローン・アルバイト——言葉は知っていても、仕組みまで正確に理解している保護者は少ないのではないでしょうか。
この記事では数字と仕組みから目を逸らさず、保護者と高校生の両方に向けて書きます。「うちはどうするか」を親子で話し合うきっかけになれば幸いです。

おかぁちゃん、オープンキャンパスでもらったパンフレットに載っていた学費、すごく高くてびっくりした。大学の学費ってこんなにかかるんだね💦

おかあさんもびっくりしたわ。お母さんが大学生の頃は、私立文系で年間60万円台。今は、同じ文系でも96万円くらいだそうよ。

え!30年で1.5倍!

こんなにも教育費が上がるとは想定外だったわ。シミュレーターでちゃんと確認してから計画を立てないといけないわね。
① 大学進学にかかるお金、全部でいくら?
「学費」と聞くと授業料だけをイメージしがちですが、実際には入学金・施設費・生活費・受験費用など、多くの費用がかかります。
4年間の学費(授業料+入学金)の目安
国立大学の標準額は入学料282,000円、授業料年額535,800円で、4年間の学費総額は約243万円が目安です。私立大学は学部によって大きく異なります(出典:文部科学省令・旺文社「2025年度大学の学費平均額」)。
| 種別 | 4年間の学費総額の目安 |
|---|---|
| 国立大学 | 約243万円 |
| 私立大学(文系) | 約400万円 |
| 私立大学(理系) | 約550万円 |
| 私立大学(医歯系・6年間) | 約1,600万円超 |
(出典:文部科学省令・旺文社「2025年度大学の学費平均額」・常陽銀行コラム)
⚠️ 近年の値上がりに注意
私立大学の授業料は上昇傾向にあります。また国立大学でも、2026年7月現在、東京大学・一橋大学・千葉大学・東京科学大学・東京農工大学・東京藝術大学、その他合計11校が標準額より高い授業料を設定しています。さらに、2027年度からは新たに4校が授業料改定を予定しています。(出典:大学ジャーナル)。
学費以外にもかかる費用
大学受験から入学までの短い期間だけで、出願から大学入学金や教科書代で少なくとも100万円以上かかっているというデータがあります(出典:全国大学生活協同組合連合会「2025年度保護者に聞く新入生調査」)。さらに、下宿する場合は部屋探しや入居・引越費用等も追加されます。自宅外通学(下宿)の場合、生活費(家賃・食費・光熱費など)が4年間でさらに数百万円加わります。
4年間の総費用——学費+生活費を合計すると
学費だけでなく、在学中の生活費(食費・住居費・光熱費・通信費など)を合わせると、4年間でかかる費用は大きく変わります。以下はJASSO「令和6年度学生生活調査」(2026年3月公表)の居住形態別データをもとに、4年分として筆者が試算したものです。
⚠️ 内訳の定義について(JASSO準拠)
「学費」=授業料・その他の学校納付金・修学費・課外活動費・通学費の合計。
「生活費」=食費・住居・光熱費・保健衛生費・娯楽・し好費・通信費などの合計。受験費用・塾代は含みません。あくまでも目安であり、大学・地域・生活スタイルによって大きく異なります。
| ケース | 年間の学費+生活費(目安) | 4年間の合計(目安) |
|---|---|---|
| 国立大学・自宅通学 | 約120万円 | 約480万円 |
| 国立大学・自宅外(下宿) | 約180万円 | 約720万円 |
| 私立大学・自宅通学 | 約191万円 | 約764万円 |
| 私立大学・自宅外(下宿) | 約269万円 | 約1,076万円 |
(筆者試算。根拠:JASSO「令和6年度学生生活調査」2026年3月公表・居住形態別学生生活費データをもとに4年分として算出。学費・生活費の定義はJASSOの調査定義に準拠)
💡 ご自身でも試算してみてください
- JASSOの奨学金貸与・返還シミュレーター:https://simulation.sas.jasso.go.jp/simulation/——借入月額・借入期間を入力すると月々の返済額と総返済額を確認できます
- 日本政策金融公庫の教育ローン返済シミュレーター:https://www.jfc.go.jp/n/finance/ippan/sim.html——借入額・返済期間を入力すると月々の返済額を確認できます
- JASSO「令和6年度学生生活調査」:https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_chosa/2024.html——最新の学生生活費・収入状況のデータを確認できます
📖 受験前にかかる費用(塾代・受験料・入学金)の詳細は大学受験にかかる費用の総まとめをご覧ください。
② 奨学金の仕組み——「借りるのは子ども、返すのも子ども」
奨学金は種類によって性質が全く異なります。まず大前提として知っておいてほしいのが「誰が借りて、誰が返すのか」という点です。
奨学金は「子どもの借金」
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、学生本人が借り手であり、返済義務を負うのも学生本人です。親が保証人になる場合はありますが、毎月の返済をするのは子ども自身——社会に出た瞬間から始まります。
3種類の奨学金の違い
【給付型奨学金(返済不要)】
返済不要の奨学金です。ただし家計基準・成績基準があり、対象者は限られます。2025年度からは多子世帯(子ども3人以上を同時に扶養する世帯)への支援が所得制限なしで拡充されました。まず自分の家庭が対象になるか確認することをおすすめします(出典:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」)。
【第一種奨学金(無利息)】
返済時に利息のつかない貸与型奨学金です。国公立大学・自宅通学の場合は月4.5万円、自宅外通学は月5.1万円が上限。私立大学の場合は自宅通学で月5.4万円、自宅外通学で月6.4万円が上限です。無利息ですが、成績・家計の条件が厳しめです(出典:JASSO公式)。
【第二種奨学金(有利息)】
月2〜12万円の範囲内で希望する金額を選択できます。第一種より審査が柔軟ですが、返済時に利息がつきます(出典:JASSO公式)。
「金利が決まるのは卒業時」——最も重要な事実
第二種奨学金で知っておかなければならない最重要の事実があります。利率は、貸与終了月(卒業時)に決定します。貸与開始月の利率ではない点に注意してください。貸与終了するまで利率はわかりません(出典:JASSO公式サイト)。
つまり、入学時点では「将来いくらの利息を払うことになるのか」が確定していません。
固定方式 vs 見直し方式(変動方式)
第二種奨学金の利率には2つの方式があります(出典:JASSO公式・奨学金バンク)。
| 方式 | 内容 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 利率固定方式 | 卒業時に決まった利率が返済完了まで変わらない | 返済額を固定して計画を立てたい人 |
| 利率見直し方式 | 5年ごとに利率が見直される(変動する) | 金利が下がった場合のメリットを受けたい人 |
金利急騰の現実——「低金利時代」は終わった
固定金利方式の利率は2021年4月に約0.3%だったものが、2026年6月には2.922%に到達しました。利率見直し(変動)方式も2021年には0.003%という超低水準だったものが、2026年6月には1.900%へと跳ね上がるケースが出ています(出典:JASSO公式)
平均借入総額と返済の現実
大学卒業時の平均借入総額は、第一種奨学金で約208万円、第二種奨学金で約336万円です。第一種奨学金の場合、平均14年かけて返します。第二種の場合は金額が多くなりやすく、返還期間も平均17年と長くなります(出典:JASSO・高校生新聞2026年5月)。
第二種を上限(月12万円)で4年間借り続けた場合はさらに深刻です。借入総額は576万円で、2025年3月の利率1.641%(利率固定方式)で計算した利息を含めると、返還総額は680万円に達します。毎月2万8,000円ほどを20年返し続ける必要があります(出典:JASSO・高校生新聞2026年5月)。
⚠️ 振り返って「もっと借入額を抑えればよかった」と感じた人は、「ちょうどよかった」と回答した人と同数で最多でした(出典:塾選ジャーナル調査)。奨学金は「借りる時点」ではなく「返す時点の生活」に影響します。
③ 教育ローンの仕組み——「借りるのも返すのも親」
奨学金と混同されやすいですが、教育ローンは仕組みが全く異なります。
教育ローンは「親の借金」
教育ローンは保護者(親)が借り手であり、返済するのも親です。子どもが社会に出たときの荷物にならない——これが奨学金との最大の違いです。
国の教育ローン(日本政策金融公庫)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 借りるのは | 保護者(親) |
| 限度額 | 子ども1人あたり最大350万円 |
| 金利 | 年4.05%(固定)2026年7月〜 |
| 返済期間 | 最長20年 |
| 使途 | 入学金・授業料・受験費用・下宿費用など |
| 特記 | 母子・父子家庭は金利▲0.4%の優遇あり |
⚠️ 金利上昇に注意:国の教育ローンの金利は2024年の年2.4%から2026年7月には年4.05%まで上昇しています(出典:日本政策金融公庫公式・ANDLOAN・2026年)。
銀行系・信販系教育ローン
銀行系は年2.0〜4.5%程度と幅がある一方、取引銀行・住宅ローン利用者向けの金利優遇があるケースもあります。信販系は審査スピードが速い反面、金利は高めの傾向があります(出典:暮らしコストラボ「教育ローン完全比較2026」)。
奨学金と教育ローンの組み合わせ
入学金・前期授業料などまとまった支出は国の教育ローン(保護者が借りる)、毎月の授業料・生活費はJASSO第二種(学生本人が借りる)という組み合わせが定番です。借りる主体が異なるため、両方の審査に通れば同時利用が可能です(出典:くらシム)。
④「誰の借金か」——奨学金と教育ローンで全く違う
ここが、この記事で最も伝えたいことです。
| 奨学金(JASSO) | 教育ローン(国・銀行) | |
|---|---|---|
| 借りるのは | 学生本人 | 保護者(親) |
| 返すのは | 学生本人(卒業後) | 保護者(親) |
| 金利 | 第一種:0%、第二種:上限3.0% | 国:4.05%固定、銀行:2〜4.5% |
| 金利確定時期 | 卒業時(借入時は不明) | 契約時に確定 |
| 返済開始 | 卒業6か月後 | 借入後(据置可能な場合あり) |
(出典:JASSO公式・日本政策金融公庫公式・くらシム)
奨学金を借りた子どもは、就職した瞬間から毎月の給与の中から返済が始まります。友人と旅行に行きたくても、結婚や住宅購入を考えたくても、その背景に返済の重さがあります。奨学金の返済を抱える社会人の中には「無理ゲー」「生きるのがしんどい」という声もあり、結婚や子育てに影響が出ている人もいます(出典:東京新聞TOKYO Web・塾選ジャーナル)。
もちろん、奨学金があったからこそ進学できた人がたくさんいることも事実です。ただ「なんとなく借りる」のではなく、借りる前に総額と返済計画を具体的に子どもと一緒に確認することが必要です。

この数年で金利が恐ろしいほど上がっているのね!借りる金額も大きく、期間も長いから、総返済額が膨らんでしまうのね⋯。

そうなのよ。なるべく借りずに済むように貯金をがんばらないと⋯。

ありがとう!
私も国公立に行けるよう、勉強がんばる!
⑤ アルバイトで補える金額は?——文系・理系で現実は変わる
「奨学金を借りてアルバイトで生活費を補えばいい」と考える学生・保護者は多いですが、実際はどのくらい稼げるのでしょうか。
大学生の平均アルバイト月収
2026年3月に実施されたタウンワークマガジン(調査企画Indeed)の現役大学生1,766人を対象にした調査によると、大学生のアルバイトの平均月収は50,000円台が最多です。学年別に見ると、1〜2年生は50,000円台、3〜4年生は80,000円台と差があります。平均シフトは週3日、平日1日4時間。平均時給は三大都市圏で1,200〜1,300円未満、その他地域で1,000〜1,100円未満が最多でした(出典:タウンワークマガジン「大学生アルバイト調査2026年版」)。
文系・理系でアルバイト時間は大きく違う
2026年3月の同調査によると、1年生は文系・理系ともに週3日のシフトが最多ですが、理系は週1日や週2日と答えた人もそれぞれ30%弱おり、週1〜3日に分散しています。理系は課題やレポート提出も多く忙しいことが伺えます(出典:タウンワークマガジン「大学生アルバイト調査2026年版」)。
| 文系 | 理系 | |
|---|---|---|
| 主なシフト日数 | 週3日が中心 | 週1〜3日に分散 |
| 平均月収目安 | 5万円台 | 3〜5万円台(ばらつき大) |
| アルバイトをしない割合 | 比較的少ない | 約20%がアルバイトなし |
(出典:タウンワークマガジン2026年版・マイベストジョブ2025年)
「アルバイトありき」の計画の危うさ
月5万円のアルバイト収入で年間60万円。4年間で最大240万円です。私立理系の学費が4年間で約550万円(自宅通学の場合)であることを考えると、アルバイトだけで学費を賄うのは現実的ではありません。しかも理系の場合、課題・実験・レポートに追われてシフトを増やせない時期が続きます。特に学業が忙しい理系学生は、仕送りや奨学金に頼りながら勉強に集中する学生も少なくありません(出典:マイベストジョブ2025年)。
📌 「アルバイトのために勉強する時間が削られたら本末転倒」という視点が重要です。大学で学んだことが将来の収入に直結するのが理系の特徴でもあります。勉強に集中できる環境を整えることが、長い目で見たときに最大のリターンをもたらすかもしれません。
⑥ 知っておきたい無償化・支援制度
「奨学金か親が出すか」以外にも、知っておくべき制度があります。
給付型奨学金+授業料減免(高等教育の修学支援新制度)
返済不要の給付型奨学金と授業料減免がセットになった制度です。住民税非課税世帯・低所得世帯が主な対象ですが、2024年度から中間所得層(第4区分)にも一部拡大されました(出典:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」・JASSO公式)。
多子世帯の授業料無償化(2025年度〜)
2025年度から子どもが3人以上いる世帯において、大学等の授業料と入学金が所得制限なしで無償になる制度が始まりました。授業料支援の上限は国公立大学で約54万円/年、私立大学で約70万円/年です(出典:文部科学省)。ただし「3人以上を同時に扶養している」という条件がある点に注意が必要です。
各大学の独自奨学金・特待生制度
多くの大学が独自の奨学金・授業料免除・特待生制度を設けています。入学前・在学中どちらで申請できるかも大学によって異なるため、志望校の制度は早めに確認しておきましょう。
JASSOの進学資金シミュレーター
JASSOの公式サイトでは「奨学金貸与・返還シミュレーター」を無料で利用できます。借入月額・借入期間・返済期間を入力するだけで月々の返済額と総返済額を確認できます。奨学金を検討する前に必ず使ってみてください。
✔ JASSOの奨学金貸与・返還シミュレーター:https://simulation.sas.jasso.go.jp/simulation/
(出典:JASSO公式)。
まとめ——親子で「うちはどうするか」を話し合う
大学進学のお金は、早く・正直に・具体的に話し合うことが重要です。
保護者へ:
- うちは子どもの学費をどこまで用意できているか
- 教育ローンを使う場合、毎月の返済額と家計のバランスは取れているか
- 子どもに奨学金を借りてもらう場合、返済の重さを一緒に確認したか
高校生へ:
- 奨学金を借りるなら、総額と毎月の返済額をシミュレーターで確認したか
- 「なんとなく大学へ行く」ために借金を背負うのか、「ここで学びたいことがある」から借りるのか
- アルバイトと勉強のバランスは、自分の志望学部で現実的に成り立つか
📖 関連記事:大学受験にかかる費用の総まとめ
📖 関連記事:総合型選抜・学校推薦型選抜・指定校推薦とは?
